雇用許可制によって外国人労働者を受入れている韓国では、統計庁と法務部が毎年、外国人労働者を対象とした実態調査を行っており、その結果を「移民者滞留実態と雇用調査結果」として公表している。2021年度の本調査結果を基に、韓国雇用情報院(KEIS:Korea Employment Information Service)が韓国内に居住する外国人の経済活動現況と特性、また外国人労働者の需給の見通し等を分析している(注1)。それによると、新型コロナウイルスのパンデミック以降、韓国内で就業する外国人(非専門人材)は減少しており、特定の産業にも影響を及ぼしている。以下、KEISの分析を中心に、韓国における最近の外国人労働者の状況と政策の概要を紹介する。
2021年の韓国内に居住する(注2)満15歳以上の外国人は、前年と同水準の133万2,000人(概数(注3))であった(注4)。そのうち、居住目的を就業活動とする外国人の数は37万9,000人で、前年の45万3,000人よりも7万4,000人減少した。更にこれを在留資格別(注5)にみると、非専門就業(E-9)は21万7,000人(前年比3万6,000人減少)、訪問就業(H-2)は12万3,000人(前年比3万8,000人減少)、専門人材(E-1~E-7)は4万人(前年同水準)であり、就業活動を目的とする外国人の減少は非専門就業(E-9)と訪問就業(H-2)の非専門人材の減少に起因していることがわかる(図及び表1)。
特に新型コロナウイルスのパンデミック以降、非専門就業(E-9)資格所持者の減少が顕著で、2019年と2020年も前年対比でそれぞれ、1,000人程度、9,000人程度の減少がみられた。一方、訪問就業(H-2)資格所持者についても同様に減少傾向にあるが、訪問就業(H-2)資格所持者は、所定の要件を満たし、在外同胞(F-4)資格を取得した後に国内に居住した可能性があるとKEISは分析している。
なお、韓国内に居住する満15歳以上の外国人のうち、就業関連以外の資格で定住型移民の性格を持つ「永住(F-5)」「結婚移民(F-6)」「在外同胞(F-4)」の資格者は近年、増加傾向にあり、2017年から2021年の変化をみると永住(F-5)資格所持者は10万3,000人から12万8,000人へ、結婚移民(F-6)資格所持者は10万9,000人から12万7,000人へ、在外同胞(F-4)は27万8,000人から38万人へ、それぞれ増加しており、この3つの資格所持者が居住外国人全体に占める割合は2017年の39.9%から2021年は47.7%に拡大した。
図:在留資格別居住者数の推移(2017年~2021年)
在留資格 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
就業活動 | ||||||
非専門就業(E-9) | 255.9 | 262.3 | 261.2 | 252.1 | 216.6 | |
訪問就業(H-2) | 201.5 | 209.7 | 200.6 | 160.5 | 122.8 | |
専門人材(E-1~E-7) | 38.5 | 37.2 | 38.6 | 39.8 | 40.0 | |
非就業活動 | ||||||
在外同胞(F-4) | 277.9 | 306.7 | 312.6 | 335.9 | 380.0 | |
永住(F-5) | 102.7 | 104.0 | 103.8 | 114.8 | 128.4 | |
結婚移民(F-6) | 108.5 | 108.6 | 109.7 | 121.5 | 127.0 | |
留学生(D-2,D-4-1?7) | 98.6 | 121.3 | 143.1 | 137.0 | 143.4 | |
その他 | 141.7 | 150.8 | 153.0 | 170.2 | 173.5 | |
合計 | 1,225.3 | 1,330.8 | 1,322.6 | 1,331.8 | 1,331.8 |
注:数値は千円未満を四捨五入した概数であり、内訳と計は必ずしも一致しない。
出所:統計庁、法務部「移民者滞留実態と雇用調査結果」(各年度)より作成。
2021年に韓国内に居住する満15歳以上の外国人のうち、経済活動人口(労働力人口)は91万人、経済活動参加率(注6)は68.3%である。これを在留資格別にみると、非専門就業(E-9)は99.8%、訪問就業(H-2)は82.8%、専門人材(E-1~E-7)は98.8%、と就業関連の資格所持者においては経済活動参加率が高い一方、永住(F-5)は75.0%、結婚移民(F-6)は54.7%、在外同胞(F-4)は66.9%に留まっており、前年比でみてもこれら3つの資格所持者に関しては経済活動への参加率は0.5~0.8%下がっている。
次に産業別の就業者数及び割合をみると、2021年は「鉱業?製造業」従事者が最も多く37万人(43.3%)。次が「卸小売り?飲食?宿泊業」の16万2,000人(18.9%)で、この後は「事業?個人?公共サービス」の14万人(16.3%)、「建設業」の10万2,000人(11.9%)、「農林漁業」の6万1,000人(7.1%)、「電気?運輸?通信?金融」の2万1,000人(2.4%)の順となる(表2)。
2019年 | 2020年 | 2021年 | ||||
人数(千人) | 割合 | 人数(千人) | 割合 | 人数(千人) | 割合 | |
農林漁業 | 52.1 | 6.0% | 56.9 | 6.7% | 61.0 | 7.1% |
鉱業?製造業 | 399.4 | 46.3% | 379.6 | 44.8% | 370.4 | 43.3% |
建設業 | 95.0 | 11.0% | 85.5 | 10.1% | 102.1 | 11.9% |
卸小売り?飲食?宿泊業 | 164.5 | 19.1% | 164.4 | 19.4% | 161.6 | 18.9% |
電気?運輸?通信?金融 | 14.0 | 1.6% | 19.2 | 2.3% | 20.7 | 2.4% |
事業?個人?公共サービス | 138.3 | 16.0% | 142.3 | 16.8% | 139.6 | 16.3% |
合計 | 863.2 | 100.0% | 847.9 | 100.0% | 855.3 | 100.0% |
注:数値は千円未満を四捨五入した概数であり、内訳と計は必ずしも一致しない。
出所:統計庁、法務部「移民者滞留実態と雇用調査結果」(各年度)をより作成。
前年対比の増減をみると、鉱業?製造業では2020年は2万人程度の減少から、2021年は9,000人程度の減少と、減少幅は縮小したもの、2019年対比では2万9,000人程度の減少となった。建設業についても鉱業?製造業と同様、2020年は1万人程度と大きく減少したものの、2021年は1万7,000人程度増加となった。この増加は在外同胞資格の所持者の増加によるとみられる。
多くの外国人が鉱業?製造業に従事する中、新型コロナウイルスのパンデミックとその長期化による影響で、この分野における外国人労働者の需給に困難が生じている。KEISは、非専門就業(E-9)及び訪問就業(H-2)の資格所持者の規模がパンデミック前の水準を回復できない場合、鉱業?製造業分野の人材難が長期化する可能性もあると示唆したうえで、今後、事業主に対する実効性のある政策が必要であるとし、外国人政策の対象を、非専門就業(E-9)及び訪問就業(H-2)といった就業関連資格を持つ外国人に限らず、永住(F-5)、結婚移民(F-6)、在外同胞(F-4)等の在留資格者に拡大していくことを提言している。
それとともに、最近、政府が打ち出した以下の2つの措置が、鉱業?製造業分野における人材難の解消につながる可能性も指摘している。
政府は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、外国人労働者の入国が困難で、これにより人材難を被る中小企業及び農漁村のあい路を考慮し、外国人労働者の在留及び就業活動期間を延長する措置を講じた。
〈対象となる外国人〉
「外国人労働者の雇用等に関する法律」による非専門就業資格(E-9)及び訪問就業資格(H-2)で、2022年4月13日から2022年12月31日の期間内に就業活動期間が満了する外国人労働者(注8)。
〈延長期間〉
就業活動期間満了日より1年間延長(注8参照)
〈措置対象となる外国人労働者数〉
非専門就業資格(E-9)は7万7,094人、訪問就業資格(H-2)は5万5,519人。
雇用労働部は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により過去2年間、入国できなかった2万6,000人余りの外国人労働者(E-9)を8月までに入国させ、併せて今年雇用許可書が発給されたものの、未入国であった2万8,000人についても入国できるよう措置し、今年末までに合計7万3,000人以上を入国できるようにすると発表した。
このため雇用労働部は、法務部と協力し、査証発給の迅速化を図るとともに、国土交通部と協力し、不定期便の増便を開始するなど需要に応じた航空機の運航を計画するとした。